みなとみらいの本屋

親戚の結婚式に横浜まで行った。先週のことだ。横浜駅は相変わらずどこか工事中である。東横線は桜木町行きしか知らなかったぼくも初めてみなとみらい線に乗った。なんのことはない、車体も東横線そのままだった。

みなとみらい駅に立つとなつかしい青い看板がすぐに目に入ってきた。Book1stだ。親族の集合時間には未だ早かったのでその小さな店内に足を踏み入れた。

本屋の品揃えというのはその立地を確かに意識している。みなとみらいに本を買いに来る人なんてどんな人だろうか。横浜で仕事をしながら休日は買い物に来るアッパーミドルな未婚女性といったところか。

書架には松浦弥太郎が正面を向いて並べられていた。よしもとばななほど求道的ではないけれど、かえって具体的なウェイ・オブ・ライフを伝えてくれる。でも「DEAN & DELUCA」のトートバッグを持っている男の子はどうもね、という誰かさんの声も頭の中に聞こえてくる。自意識過剰気味に、生活を送る。そういうのを吸収したい人が来店するのかな。良い意味でも悪い意味でも。

コミックの棚には岩本ナオの全巻がこれまた正面を向いている。amazonで漁るようにしか本を買えない地方在住者にとってすれば、その中でアンテナに引っかかった作家の本がこうやって都会の、もっとも多くの人の目にさらされる場所に陣取っているのを見るのは少しだけ勇気づけられる。「そんだけ本読んでいるんだから、あんたのその価値観とか取捨選択の基準にそろそろ自信持ちなよ」と焼き肉を食べながら言ってくれたと同期の言葉も思い出す。

レジに行くとアルバイトかと思うような女性の胸に「店長」のプレートが留められていた。この書店がどういうチェーンマネジメントの下にあるのか知らないけれど、もし品揃えを独自に裁量しているのだったらもう一度訪れたい方寸である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA