浅野いにお読破

読もう読もうと思っていた浅野いにおをついに読みました。

『ソラニン』『素晴らしい世界』『おやすみプンプン』『ひかりのまち』『虹ヶ原ホログラフ』

すべて単行本。いずれも圧倒される。というか、久しぶりに漫画で泣いた、というか。。。こういうのを読んでまだ素直に感動できている自分に安心したというか。。。

浅野いにおの描く世界というのは、日常の危うさ、と言ったらしっくり来る。人生が狂い始めるほんの些細な最初の一歩なんて、本当に誰にでも起こりうる。なにも起きない、なにも変わらない毎日を支えているものがいかにもろいか。あなただって明日には交通事故にあって死ぬかもしれない。あなたではない大切な人が明日、あなたの知らないところでものすごく悩んでいて自殺してしまうかもしれない。

なぜそれに気がつかないのさ?

それを激しく問うてくる。何度も、違う作品においても、何度もその問いがページから発せられてくる。それに答えられない自分の情けなさに、巻を置いた後文字通りもだえ苦しむ。

『ソラニン』は大学を出た後も音楽を続けたい若者の話。けれど彼は途中で交通事故で死んでしまう。彼の恋人はその遺志を継いでメンバーに助けられながら「ソラニン」(これはジャガイモの芽に含まれている毒の名前です)を唄う。

『おやすみプンプン』はまだ連載中の作品ながら、少年の感情の原風景をこれでもかというくらいに見せつけてくる。男の子なら誰もが通ってきた道だ。”プンプン”が抽象化された形態で登場するので、面白いことに余計に感情移入できてしまう。

『素晴らしい世界』はなんだろう・・・死のすごく近くにいる平凡な人達の短編連作。クマさんの強盗の話と看護婦の妹の話が出色。

『ひかりのまち』は自殺見届け屋の小学生の話。マンモス団地ならありそうな話。そしてありそうだと感じてしまうことが怖かったりする。でもそれがメインでもない。団地に住むハル子の再生の物語でもあり、またこの土地にマンモス団地を建てた大企業への復讐を望む芳一の物語である。救いがあろうが無かろうがお構いなしに物語は進む。人間はいつかは必ず死ぬ、という身も蓋もない結末に向かって。

『虹ヶ原ホログラフ』はかつての小学校の同級生や担任たちが大人になってから偶然の再会をしていく。その連鎖の中でぽっかりと真ん中に空白が出来る。彼らが井戸に落とした一人の女の子の存在だ。彼女は十数年の時を植物状態のまま病院のベッドの上で過ごしている。それぞれがそれぞれの後悔を背負いながらそれでも生きていく、重苦しい物語。

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お薦めです。

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