島本理生『波打ち際の蛍』

を、読みました。

『ナラタージュ』以降、一作一作が非常に楽しみな作家です。

主人公は恋人の暴力によって精神を病んでしまった女の子。彼女は通う精神科で出会った別の男の子となんとなくいい関係になっていく──といったお話なのですが、この作品の読みどころはおそらく病んだ精神が恋愛に巻き込まれたときの吐露が、あくまでも”健常者”がそうであるのとまったく同じであるという点。逆に言えば、恋愛の渦中にある人間の考えることなんて常に病的なんだ、というそのことをまざまざと見せつけられるというか。

しかし気になるのはこの作者が繰り返し繰り返し用いる「昔の恋人が学校の先生」というパターン。この作品でもまた使われています。このあたり、いろいろなインタビューを読んでもなにも触れられていないのですが……。

あとは「蛍」という名前の付け方とか鍼灸を生業としちゃうところとかかなり”よしもとばなな化”している気がするんですが……。田口ランディも含めて現代女性作家が総体として「体は全部知っている」的世界へ突き進んでいるのか、ぼくが読むものがそっちに偏っているのかわかりませんが、このあたりも含めて今後も読んでいきたい作家。

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