ブッキッシュ

読み捨てた本も含めると300冊は下らないじゃないかと思えるくらい、本の虫なんですが、その経験を生かして言っておきたいことがあります。

文庫の造本についてです。

新潮文庫は一度目はいいんですが、二度目読むときにかなりの確率でページが根元から外れます。ぼくは本はぎちぎちと限界まで押し広げて読むので、これでダメにした本がけっこうあります。そんなありさまなので「本なんて一度読めやいいんだ、二度も三度も読むような本はうちは出してないよ」という態度が造本から伝わってしまいます。

中公文庫は古本で買うと必ずページが外れます。年単位で保存する場合には向きません。「うちは歴史に残る本なんか出さないよ」ということなのでしょうか。

ちくま文庫は当たり外れが激しすぎます。造本のいいものはかなり頑丈にできていますが悪いものはそれはもう悲惨なありさまになります。ちくまはめったに増刷をしないことで有名ですが、いい本出しているんだから、そこも何とかしてよ。

角川文庫は造本だけはいい。もう少し実のある本を出してください。

講談社文庫は可もなく不可もなくですが、講談社文芸文庫はひどい。少しでも力を入れると薬品で固めた部分が二つに割れてしまいます。割れ物を触るようにして読まなければならないので値段も含めて何とかしてください。

さて、なんと言っても造本中身共にエクセレントなのは岩波文庫です。別に嫌味な教養フェティシズムを標榜するわけではありませんが岩波はすばらしいです。第一ページ目からしっかりと背に糊付けされていて、五年くらい経つとさすがにページが茶っけてきますがびくともしません。ページ数が多くて厚いものも真ん中のページで背が折れることもなく、無造作にかばんの中に入れておいても安心です。カバーも新潮社と違ってビニールが張ってあるので汚れに強いですし文句なしです。

まあ、岩波をほめるのもこのくらいにしておきますが、これは売り方の違いが影響しているのも知れません。ふつう本は売れなかったら本屋から出版社に返品されるのですが岩波は本屋に買い取らせて売るので返品が効かないのです。よく文庫はページの部分に斜めに切った跡がありますが、あれは返品された本の汚れをページの端を切ることによって落とし、もう一度出荷しているのです。岩波はそんなことはありませんから。ページもめくりやすく本が作られているのです。買い取り制だからこそ商品の質には文句をつけられない状態にしておく岩波書店のあり方はすばらしいと思います。もちろん異論反論もあるんですがね。

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