神田昌典・衣田順一『売れるコピーライティング単語帖』

を、読みました。

まさにあとがきに書かれているように「こんな世界があるのか」、という第一印象でした。それこそインターネット上でPVを競い合うあまたの記事の中からこれぞとクリックしてもらうために現在ではこういう技術が必要とされているのかもしれません。

そう、「技術」なんですよね。おそらく人目を引くために必要なのは奇抜な新造語ではないのだと思います。この本にパターン分けされている単語自体は正直言って平凡なものばかりです。「こんな言葉を使えばよかったのか!」という驚きではなく、もっとずっとオーソドックスで、素直なものばかり。ただ、長年の経験則も踏まえてこういう言葉を使うとこういう機能が強化されるというのが、見事に整理されています。目的に合致した言葉の並べ方、スパイスの適度な振り方、あるいはマンションポエムとは違ったコピーライティングの王道。でももう一度ヤフートピックに並んでいるタイトルを眺め返してみると意外と、同じ法則に貫かれていることがよくわかります。本書の最大の特色は、用途別に帰納させたその手際と言うべきでしょう。「単語帳」だと思うとその機能は半分以下にしか発揮されないのではないでしょうか。

だって、なんで「ヨーヨー」を「ハイパーヨーヨー」と名付けただけで新商品になるのか? もちろん商品という中身あってのものですが、その中身を的確に消費者に伝え届けるためには、やはり的確な言葉の並べ方というのがあるはず。

そうでなくとも日々届くダイレクトメール(物理・電子)に目を向けても、コピーライティングの粋が集まっていると思うと読み捨てられない、そこにどんな知恵が詰まっているのか、コピーライティングを生業にしていない人が読めば少しだけ日々の言葉に対する感度というか解像度が上がる、そんな一冊です。

そういえば昔、学生のころ本屋で感心したのが、いろんな言葉のいろんな外国語のバージョンを羅列した辞書みたいなのが売っていて、これもおそらく新しい商品とか新しい観光地を命名するに際してカッコいい外来語を引っ張ってくる便覧として作られたもののようでした。そういう本があって、仕事としてそういうニーズがあるということを知っただけでも少しだけ世の中を見る目が変わったと言いますか。糸井重里みたいな一握りの天才がパッとひらめいた言葉の「芸術性」に酔いしれる世界もあるんでしょうが、実際のところは手垢だらけの単語帳を開いて日々言葉探しに苦心惨憺しているコピーライターの皆さんの苦労がこの世界の販促物を成り立たせている……。

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