月別アーカイブ: 2013年6月

デコボコマーチと分人主義

「君は歩いてく たくさんの君と歩いてく」というイメージはとても良いと思う。

自分というものをロジカルで矛盾のない一つの体系として捉えない。たくさんの自分がワイワイガヤガヤと隊列を作っている。誰かが先頭になったかと思えば次の誰かが先頭になり、道を踏み外しながらもなんとなく付いてくる者もあれば、笑ったり泣いたり落ち込んだり忙しい連中も付いて来る。一つ一つの表情を見ればバラバラの彼らも、共通するのは相変わらずひとつの方向へなんとなく進んでいるということ。

この人間観はたぶん、平野啓一郎の提唱する分人主義に通ずるものがある!

千田琢哉『「やめること」からはじめなさい』

題名どおり、なんでもかんでもやってやろうの足し算ではなくて、今やっていることはほんとうに必要なことなのだろうか? という引き算で人生を考えてみることも必要なのではないかと考えさせられるヒントが大きなフォントで紹介されています。

星海社新書というのは最近創刊されて、20代、30代向けの自己啓発的なラインナップを誇るシリーズのようなのですが、それなりにタイトルのつけ方もうまく話題性という意味でも成功しているのではないでしょうか。いずれにせよ、読むだけではダメで、つまりこの本の内容に対していかに過去類似本が山積されてきたかということを批判めいて言ってもなんにも有効ではなくて、自分の行動がページを閉じた瞬間からどう変わるのかが重要なのです。

それも、けっきょく自分のほうが古典よりもえらいと思っているところが、大もとなのではないかな。古典なんか、こっちからいくらでも解釈してやるという、そういう了見なんだよ。「万葉」をよく読んでいれば、「万葉」というものは壺みたいになるでしょう。そうすれば、いろいろのことを教えてくれますよ。(小林秀雄「藝について」)

なにごとにおいても、ね。

本はいつでもぼくたちの味方だ

を、読みました。

会社生活も8年になんなんとしていますが、唯一逃げ続けてきたのがゴルフです。理由はいろいろありますが、今後自らの意思をさすがに曲げねばならない危機が迫りそうな予感もするので、とりあえず独特の用語やマナーなど雰囲気を知っておくということのためだけに読んでおくことにしました。

少しでも「知っている」「聞きかじっている」ことが後々の行動を前に進める力になってくれることはままあるのです……。

決定版「三島由紀夫全集」第十二巻

を、読みました。

いわゆる著者の大衆小説である「複雑な彼」「命売ります」を所収していますが、いずれも一級のエンターテイメントです。特に初出が「女性セブン」(「欠号多数」のため校訂が充分に出来ていない!)「週刊プレイボーイ」ということもあり、十二分に想定読者に対するサーヴィスが行き届いています。なにより、純文学に片足を突っ込みながらこういう娯楽作品もきっちり仕上げてくるところに、汲み尽くせぬ三島由紀夫の面白さがあります。

「命売ります」などは小説というよりは二時間くらいのちょっと長めの舞台にしても面白いかも知れないと思いました。

信頼は、時間をかけて、あるいは顔を出し続けて、足を運んでしか得られるものではない。

仕事でのそれは、時にゼロリセットされることもある。同じ人と同じ仕事ばかりやっているわけではないから。

それでも、まず私から、また最初から小石を積み上げる。

そういうのを、仕事と言ってもいいのかも知れない。