見てきました。公開初日にもかかわらずガラガラでした。なんてこった、三島先生の映画化だというのに、もっと熱くなれよ。
ネタバレになるのであんまり詳しいことは書きませんが、まあ予想通りの映画ですね。「純愛」と思っていただいていいかもしれません。でもおそらく映像の美しさを捨象してしまったら単にさかりのついたなんとやら…とも見られなくもないところが難点。
ただ感心したのは、原作では次巻以降の大きなテーマである輪廻転生の予告ともなるべき次の台詞の解釈です。
「俺たちはきっと会う、滝の下で」
映画のラストでもちゃんと松枝は言うんです、汽車の中で。ところが原作にはないある小道具を使うことで「俺たち」が松枝と本多ではなく松枝と聡子の意味にすり替わってしまっています。次の物語への橋渡しともなるべき台詞が映画では「純愛物語」としての完結を意味してしまっている――これにはなかなかうならせられましたね。そうくるか、行定監督。
あとはおおむね原作に忠実な作りになっています。三島の小説を読みながら思い描いていた感じがけっこうそのままの形でスクリーンに出てくるのは原作が映像的だからということなのかわかりませんが、そこは満足でした。
それにしてもタイの王子はだいぶ役割がなかったような……指輪をなくすエピソードも無かったですしね。原作から恋愛的な要素を抽出した物語だと思えばいいのかな(うん、まあそれならやっぱり「予想通りの映画」という最初の結論に戻ります)。そのあたりはもう一度原作を読み直して比較してみようと思っています、……そっか飯沼も出てこなかった。いろいろまだつっこまなければならないところが多いようで。